2019年06月20日

2019年6月15日 京都府南丹市胡麻・京丹波地区有機生産者を訪ねるツアーに参加して―山本奈美  

生産者を訪ねるツアーに参加して
山本奈美(使い捨て時代を考える会会員/京北町有機農家/京都大学農学研究科博士課程)

6月15日(日)、胡麻地区、京丹波地区の5名の生産者さんの圃場を訪ねるツアーが開催され、参加しました。消費者会員・生産者会員が約25名ほど集まり、大盛況な企画でした。私は新しい会員なので知らなかったのですが、そもそもこの企画は、生産者会員さんたち同士で情報を交換し合う場として始まったそうです。今回は消費者会員の参加が多かったとはいえ、園部地区の他の生産者会員さんたちの参加もあったことから、質問は実践に基づいたとても具体的なものでした。技術や知恵に関するやり取りも多くて、(私も農業をしているので)刺激的かつとても勉強になりました。どんなことを学んだのか、手短ですが報告させていただきたいと思います。

熱心に話を聞く山本奈美さんDSCF2921.JPG

谷口成生さんの圃場

いくつかの車で乗り合わせて朝胡麻に集合し、まず最初に訪ねたのは南丹市胡麻地区の谷口成生さんの田んぼです。私も愛飲している自然酔の原料米の生産者さんです。谷口さんは、米→ナス→玉ネギ→黒豆、で輪作されています。米と豆の輪作は草も抑えられ、豆が固定した窒素を稲作に生かせるため効率的です。そこにナスと玉ネギを加え、肥料分をうまく循環させてらっしゃいます。その様子を拝見することができました。
 
谷口成生さん
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最初にお訪ねしたのは、1反強ほどの隣り合う2枚の田んぼ。ひとつは主食用の米で品種は祭り晴れ。もう一枚は酒米で品種は山田錦。苗はポット苗で育苗したものです。ポット苗の方が生育が良くて田植え後の活着も良く、草との闘いに勝ちやすいという利点があります。稲の姿も美しく、植えた田んぼも美しい(生産者さんの美へのこだわりに頭が下がりました!)。その一方で、手間がかかるのです。約3ヘクタールもある田んぼ全てをポット苗ではできないし、失敗したときのリスクも大きい。リスク分散のためにも、無農薬米をポット苗で、省農薬米は普通のマット苗で育苗、と使い分けているそうです。5月16日に田植え、5月23日に除草機を1回かけたとのことですが、どちらも草がほとんど生えておらず、分けつもしっかりと進んでいます。トロトロ層を作ってくれるイトミミズもたくさん。とってもきれいな田んぼでした。

谷口さんの田んぼ
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除草に使っている乗用の除草機は、(使い捨て時代を考える会の)縁故米基金で(一部)購入されたものです。その前は手押しのエンジン式除草機で除草していましたが、約3ヘクタールもの田んぼ全部をこれで除草すると人間も機械もダメになる、とのことで、乗用の除草機があってこそこの規模で無農薬・省農薬でお米作りができているようです。

除草機
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次にお訪ねしたのは黒大豆の畑。さすが黒豆の産地。1週間程前に直まきで播種したところです。もう大分芽が出ていましたが、発芽は6,7割方というところでしょうか。もちろん播いた種が全て発芽するわけではありませんが、それでもネキリムシや鳥害も少なくない様子。鳥対策の糸を張っていらっしゃいましたが、鳩やカラスから豆を守るのは難しい!欠株したところは別のナス畑で作ってらっしゃった苗を移植するとのことでした。

黒大豆の畑
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次に茄子畑に移動。千両茄子と丸ナスを植えてらっしゃいます。1反強ほどのナス畑は壮観です。立派なナスの葉っぱがつやつやしています。驚いたのはビニールマルチの代わりに堆肥をどっさーーーーりと畝幅いっぱいに積んでらっしゃるところ。これでナス周りの草は抑えられるそうです!この肥料は次に植える玉ネギのよい肥料になります。その後黒豆を植えますが、そこまでこの肥料で乗り切るとのことです。お訪ねしたとき、家族総出(ご両親・奥さま・お嬢さん)でナスの誘引作業をされていました(お仕事中失礼しました!)。誘引のヒモに使用されていたのは生分解性のヒモ!ビニールではありません。「ビニールマルチもヒモもゴミになるのがイヤヤ」とにっこり。篤農家さんのこだわりが見えた瞬間でした。

ナス畑、生分解性のヒモ
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伊藤芳雄さんの圃場

次に伺ったのは、伊藤芳雄さんの畑です。同じ胡麻地区、谷口さんの圃場から10分ほどいったところにあります。黒々とした土に、青々としたニラがわっさりとそだっていました。「これがニラ!」「そういえば昨日も伊藤さんのニラ食べた!」「最近よく食べてる!」という会員さんの歓声があがり、食卓と畑がつながる瞬間です。ニラは傷みやすいので、日が落ちて涼しくなった頃収穫するそうです(夜7時ごろ)。朝も涼しいですが朝露で傷みやすいためこの時間が一番いいとのこと。消費者会員さんの食卓でおいしく食べてもらうためにきめ細やかな仕事をされています。

ニラ畑
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同じ畑には、5月10日に定植したキュウリが140本、2つの畝にきれいに並んでいます。キュウリを支える支柱のてっぺんには銀色のテープがひらひら。アブラムシやウリバエ(ウリハムシ)除けですがあまり効果は感じられないそう。それでも立派に株が育っているので、もう虫には負けなさそうです!もう実を付けてはいますが、今はニラで忙しいので、キュウリの収穫は抑えているそうです(摘果して実らせないようにする)。キュウリの収穫が始まると、毎朝晩と収穫する、朝から晩までキュウリと付き合う日々になるそうです。もうすぐ伊藤さんのキュウリが次々とみなさんの食卓に上ることでしょう!
キュウリの隣にはエン麦が青々としげり、風にたなびいています。もうすぐ刈り倒し緑肥にします。ここで緑肥について生産者会員さん同士でプロの会話が盛り上がります。「セスパニア試した?」「試したけど効果なかったわ」。農家さんは他農家さんの圃場を見ると冗舌になるそうです(笑)。
また反対の隣には透明ビニールマルチで覆われている畝があります。もうすぐニンジンの播種をする畝です。ニンジンは初期の除草対策が頭を悩ませるところ。太陽熱消毒して(ビニールをかぶせて太陽熱で地温を上げ、雑草の種を殺す)、除草剤を使うことなく草対策を行っていらっしゃるのです。「これでも完璧には抑えられない」と伊藤さん。試行錯誤しつつベストを模索される姿に感銘を受けました。

キュウリとエン麦
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木口幸男さんの圃場

次に伺ったのは木口幸男さんの畑です。カボチャがしっかりと繁りはじめています。すぐ隣の畝もカボチャの葉っぱで埋め尽くされるのでしょう。その隣に赤オレンジ色のきれいな花を咲かせている豆がありました。なんだろう???農作物や植物にお詳しい会員さんたちですらハテナです。木口さんの奥さまからお聞きした答えは「紫花豆」。初めて見ました!南国にあるようなきれいな花!その隣はモロッコインゲン。草に覆われつつも、しっかりつるを伸ばしています。

木口さん
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紫花豆
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ハウス栽培のキュウリも訪問しました。2mほど高くまで育ち、美しい実をしっかり付けています。これからたくさんのキュウリを届けてくれることでしょう!

キュウリ
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足早に木口さんの畑を後にすると待望のランチ。胡麻のこだわりカフェで名物のドイツ風ソーセージとパンです。ドイツ人オーナーのシャウベッカーさんご夫妻手作りで、とってもおいしくて食べ応えもたっぷり。会生産者さんのレタスやキュウリも振る舞って頂きました。キュウリには黒沢さん手作りの実エンドウの味噌!初めて食べるさっぱり風味の味噌はキュウリによく合いました。ごちそうさまでした!!!

2013年バイバイ原発きょうとデモにトラクターで来たシャウベッカー・デトレフさん
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ドイツカフェみときや手製のソーセージ
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みときや
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山本正行さんの圃場

おなかの心も満たされて次に向かった先は、京丹波地区の生産者さんお二人の圃場。最初は山本正行さんの田んぼです。山本さんも、米・枝豆・黒大豆を2年ごとに輪作されているそうです。見せていただいた田んぼは、5月15日に田植えをし、21日にチェーン除草、米ぬかを26日にまかれた田んぼです。品種は短棹のコシヒカリ。この田んぼでは欠株が目立っていました。今年は春が寒かったため苗の育ちが悪く、植えてすぐのチェーン除草に耐えられず、消えてしまったそう。昨今の天候不順も含めていくつかの悪条件が重なった結果の出来事とはいえ、経験を積んだ篤農家さんでもこういうことが起こってしまいます。欠株は収量減に直結します。どうしたら恵みだけでなく、このリスクも含めて消費者と生産者で分かち合えるのでしょうか−会とセンターの長年のテーマであり、提携運動の40年以上の歴史の中でたくさんの人びとによって模索されてきた課題ですが、今もまだこれといった回答が見つからないのが現状です。交流し続けるしかないのでしょうね。

山本さん
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山本さんの田んぼ
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山本さんの黒大豆の苗も見せていただきました。128穴のセルトレーが40枚ほどずらーっと並ぶ黒大豆の苗は壮観です。「これ、稲みたいに田植機があるわけではないですよね?どうやって植えるんですか?」素朴な疑問が会員さんから出ました。「こういう道具があるんです」と苗の移植機(軽量・ハンディーなハンドプランター)を見せてくださいました。腰をかがめないで植えることができるとはいえ、植えるのは一株ずつです。「気が遠くなるような作業ですね」と会員さんもため息。

黒大豆の苗
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黒澤喜一さんの圃場

最後に向かったのは、黒澤喜一さんの圃場。棚田が連なる美しい圃場です。中心に大きなケヤキの木が茂り、訪ねる人が「トトロの田んぼや」と感嘆の声を上げるそうです。いろいろあって基盤整備を「逃れた」田畑は、昔ながらの石垣で作られた畦がゆるやかなカーブを描く小さな田んぼを囲み、それが段々と連なる−まさに「原風景」、ため息がでるほどきれいな畑です。美しい反面、機械は入りにくいし、畦が多いということは草刈りも管理も大変なはず。効率性を考えたら絶対に四角い大きい圃場の方がいいに決まっています。それでも、効率性の名のもとに失ってしまっているものの大きさを目の前に突きつけられた気がする畑でした。

ケヤキの木のある圃場
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田んぼは3枚。黒澤さんも1回除草を施しました。草の生えていないきれいな田んぼです(あっちの方はたくさん生えてるんやと笑ってらっしゃいましたが)。黒澤さんの除草は人力の田打ち車のみ。1反の田んぼで3km分の距離を行ったり来たり、田打ち車を押して引きつつの除草です。

畑は少量多品目で様々なものが植えられています。カボチャはロロン(おいしい!)とテツカブト(ベテラン会員さんに超ウワサの!!!初めて見ました!)。一緒に植えることでうまく実るのだそうです。移植する予定のネギ、キュウリ、ズッキーニ、実エンドウにナス。弧を描く元棚田の畑にきれいに植わっている様子は、まさにアートでした。「収量が低くても、味がおいしい野菜を作りたい。センターで届けられるこの野菜だけは食べたいから会員を続ける、という会員さんが出てくるぐらいの野菜を作りたい」とおっしゃる黒澤さん。考えさせられます。

見事な少量多品目の畑
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そして最後に見せていただいた畑はこの日のハイライト。カボチャと麦の草生栽培です。農林61号という小麦は自家採種してもう4、5年になる種で育てています。琥珀色に実った小麦の穂と青々としたカボチャの苗のコントラストも美しい。小麦はもうすぐ刈り取りの時期を迎えるそうです。通常、麦は緑肥として育てる場合、穂が実らないうちに刈り倒し、マルチ(畑を覆う資材)として利用します。黒澤さんの場合は麦を収穫し、その後の穂をマルチとして利用するのだそうです。

カボチャと麦の草生栽培
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まとめ
5名のベテラン生産者さんたちの田畑は、その年月をかけて日々培ってこられた知恵と経験とこだわりがギュギュッと詰まっていました。まさにアートであり生き方であり、十人十色です。今、農繁期まっただ中。ひとつでも農作業をこなしたい!そんな時期に、会員の私たちに快く田畑に案内していただいてとても感謝の気持ちでいっぱいです。

最初に言われた谷口さんの言葉も心に残ります。「観光客で来はったんとちゃうんやから」。その続きは一人一人が考える必要がありそうです。畑を見て「すごいなー」で終わらず、消費者は生産者の対峙する世界に足を一歩踏み入れた今、何ができるのでしょうか。消費者を一歩受け入れる生産者と一歩踏み入れた消費者が紡ぐ関係性で、どのような動きを生みだすことができるのでしょうか。大きな宿題を抱えて帰路についたのでした。



同じツアーを技術的な視点からは
2019.6.16「夏の田畑を見に行こう−除草・抑草の工夫」有機農業見学会 報告

posted by 使い捨て時代を考える会/安全農産供給センター at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 事務所
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