2018年08月24日

7月22日「最新!アメリカの有機農業事情 アメリカ食と農の光と影、人々のオルタナティブへの実践」

【確定】第12回カラーパタゴニア山本奈美.jpg

DSCF0647.JPG

最新!アメリカの有機農業事情

2018年2月にアメリカカリフォルニア州の有機 農家や食と農NGOを視察した山本奈美さんと近藤千嘉さんに
アメリカのCSA( 消費者と生産者がつながるアメリカの有機農業提携運動 )の現在やそれをとりまく環境の
現在を報告してもらいます。

■講師: 国内外の「オルタナティブ・フード・ネットワーク」の研究と実践

近藤千嘉さん (京都大学修士課程・アメリカからの留学生)
山本奈美さん (有機農家・京都大学博士課程)


レクチャー感想:山本奈美(講師)

「一つの国」と言い切ることは困難で、こと、食と農に関しては「両極端」が存在する国、米国。

その米国の中でも特異な土地とされる、カリフォルニアの食と農関連の取り組みを、彼の地で生まれ育った日系米国人である近藤さんと一緒に訪ねる旅は、刺激的であり、深く考えさせられるものでした。

そもそも、私はかなり「南から目線」で米国を見つめていました。

ラテンアメリカ文化にあこがれた約1/4世紀前、初めての海外であるメキシコの大地に足を踏み入れてからというもの、「米国」という国をラテンアメリカの人々の目線やフィルターを通して見ていたからです。

「メキシコの不幸は、神からあまりにも遠く、米国からあまりにも近いことだ」
という有名な格言が示すように、メキシコを含むラテンアメリカの国々は北の大国の介入を陰に陽に受け続けてきました。

少なくない人々が反感を覚える傍ら、数多くの人々が「よりよい暮らし」が望めると期待して目指す大地。

もちろん、移住したからといって決して豊かな暮らしが保障されているわけではありません。

トランプ大統領の「国境線に沿って壁を作って不法移民を防ぐ」(3200qにも及ぶ山川砂漠の土地であり、私有地もあることから非現実的であると指摘されていますが)という言説が批判されつつもある一定の支持を受けていることに見られるように、移民に対する風当たりは近年さらに厳しい。

その一方で、そのような状況下の不法移住者は格安賃金の労働者として重宝されており、彼らがいないと農場経営(特にオーガニック農場は)が成り立たない、という指摘もあります。

さらに、不法移住者を含む低所得者層は、加工食品や清涼飲料水の良い顧客でもあるという事実。

低所得者層への食費援助というスキームへは国家予算が莫大に投入されていますが、彼らが補助金を使って購入するのは新鮮な野菜ではなく、大規模モノカルチャーの遺伝子組み換えコーンや大豆などでできている加工食品や清涼飲料水などであることが多く、一握りの工業的食品産業にその利益が吸い上げられていくというメカニズム。

「オーガニック」が流行っていて、どこでも(それこそコストコでも)お手頃価格で手に入るというものの、それらオーガニック農産物は実は、大規模工業的農業を営む大企業が、農地の一角をオーガニックで運営、使う機械も栽培方法も同じであるが、ただ、インプット(種や肥料、農薬など)が「オーガニック仕様」であるのみであるという状況。

このような食と農をめぐる現実を知れば知るほど、「個人の力ではどうしようもないかも。。。」と打ちひしがれてやる気も何もなくなってしまいそうですが、何とかオルタナティブの構築を模索する多様な取り組みが織りなす、力強いフードムーブメントが起こっているのもまた米国のすごいなぁ、と思える一面でした。

小規模多品目の家族経営のオーガニック農業で、おいしくて健康にも環境にも良い食べものを生産し、作り手・食べ手・環境の「三方よし」のビジネスモデルを模索して試行錯誤する人々(これは本当に興味深かった)。

子どもたちや若者の食と農の教育に力を注ぐ取り組み、貧困層と富裕層の間における「食の二分化」解消に向けた取り組みに力を注ぐ人々。

マイノリティ農家が小規模オーガニック農業を始めるための手厚い支援プログラム。

米国で生まれ育った国籍もアイデンティティも米国人でも、自分たちの両親の出身国での食文化を取り戻す活動をする人々。

「De-colonizing food(食の「脱」植民地化)」というキーワードのもと、自分たちの食、農、健康がいかに「一握りの人々の利益のために支配(植民地化)」されているのか、という現実を真正面から見つめ、そこからの脱却を目指して、自分たちの食のルーツを取り戻す活動を展開する人々。

決定的だったのは、不法移民という不安定な滞在資格の上、マイノリティ、女性、乳飲み子も含めた子ども4人を抱えたシングルマザー、という、この上ない不利な状況にも関わらずオーガニック農場を起業し、CSAで人々に安全な野菜を提供していたメキシコ人女性のマリアさんとの出会いでした。


アメリカの食と農の光と影_2018年7月22日_ページ_45.jpg

 私たちが訪ねたのは3月上旬、アブラナ科の野菜が一斉に菜の花をつけている畑を案内してくれて、「売り物にならない。」と肩を落とすも、「菜の花、アジア系が大好きだよ。高値で買ってくれるよ!」と近藤さんと私で食べてみせると、「次のファーマーズマーケットで売るよー!」と大喜びしてくれました。

働いて、働いて、働きづくめだった。子どもたちにも負担をかけた。でもオーガニックで小規模だからこそ、4人の子どもたちを育てることができた。その子どもたちは、この農場で仕事を得て、孫たちと時間を過ごすことができている。孫が海外へ修学旅行へ行く費用だって出せた。そんな仕事を一歩一歩積み上げてきたことを誇りに思っている。」と語ってくれた彼女は、「もうメキシコに帰るつもりはない。家族が暮らす、ここが私の終の棲家」と笑います。

滞在許可はもちろん、有効なパスポートもないままだなんて、思えないほど力強かった笑顔が、今も心に残っています。

 短かったカリフォルニア訪問ではあるが、多様で多彩、クリエイティブかつ真剣、そして愉快な人々に出会い、語り合い、笑い合い、多くを学ぶ旅でした。

おいしいものを分かち合うことが根幹にある運動は、「美味」しくて「愉しい」ものだとフードアクティビストであり研究者でもあるラージ・パテルが言ったように、おいしいものは絶望してしまいそうな現実にも立ち向かう力を備えているようにも思えてきます。

もちろん、理想的でパーフェクトな取り組みが存在していたわけでは決してないのですが、こんなに逆風が強い中、力強く地に足つけて食と農のオルタナティブを実践する人々とその取り組みについて、少しでも共有できる会になったのだとしたら、とてもうれしく思います。

レクチャー感想(近藤千嘉)

私が日本に来て早一年が立ちました。先月の学習会では、「アメリカの食と農の光と影、人々のオルタナティブへの挑戦」を発表をさせていただき、「使い捨て時代を考える会」に感謝の気持ちでいっぱいです。

誠にありがとうございました。

アメリカの社会問題、特に制度的な人種差別主義については英語でも説明をするのが難しく、日本語で発表でする自信はなかったのですが、今回の学習会でいい経験をさせていただきました。

実は、大学時代から自分の両親にも、このテーマについて具体的に日本語で説明が上手く出来ず、そのことが日本語の勉強を始めるきっかけになりました。

アメリカによる貧富差と人種差別主義の歴史に基づいて、アメリカの食と農に関する問題や挑戦は奥深く、背景も日本と違うところがあります。

しかし、アメリカでも、「使い捨て時代を考える会」でも、人々のオルタナティブな模索目的は似ていると思います。

最終的なヴィジョンが同じでも、たどり着く道はそれぞれの場所や人々によって、変わっていくべきだと思います。

例えば、「使い捨て時代を考える会」が指導している活動は、周りの生産者と会員さんの悩みや希望を聞きながら、お互いに協力して、みんなに合うようなオルタナティブを作っていると思います。

カリフォルニアでも、同じような活動をしている団体や小規模な生産者は存在しています。

そこで周りの人と一緒に相談しながら、そのコミュニティに適したオルタナティブを作って行くことが理想的だと思います。

現在、グロバール化がますます進んでいて、世界中どこに行っても同じ物が販売されて簡単に手に入ることができます。

例えば、、スターバックス、マクドナルド、コカコーラなどです。やはり、食と農に関するオルタナティブはグロバール化の方向に進んでいって欲しくはないと思います。

 世界中で頑張っている小規模農家たちが、それぞれ横のつながりを大切にし、情報交換をして連携を深めてもっとオルタナティブへの挑戦をしていってもらえることが理想です。

これからも、みなさんから色々と学びたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。


■会 場:パタゴニア京都 3F イベントルーム
■日 時:2018 年7月22日(日) 13:30〜15:30
■主 催:NPO法人使い捨て時代を考える会/ 安全農産供給センター
■共 催:日本有機農業研究会
■問合・申込み:TEL 075-361-0222 FAX 075-361-0251   email : info@tukaisutejidai.com
※事前申し込み歓迎・でも飛び込みもOK・お子さん連れ歓迎
■参加費:会員500円 一般1000円(学生500円)

講師紹介
■山本奈美さん
 国内外のNGOのスタッフとして世界を駆け巡り、訪れた国・都市は世界45カ国以上、70都市以上。主なフィールドはラテンアメリカ。ポジティブで多様な文化に魅せられつつも、目の当たりにした貧富の格差に愕然とし、私にできることは何かと考えるため、オランダの大学院(Institute of Social Studies)に入り、開発学を専攻しました。簡単にいうと、「貧困になる原因」を探り、「貧困をなくす」ための手法などについて学ぶ学問です。世界中の学友たちと共に「貧しさとは」「豊かさとは」について考えた学生生活を送りました。
 その末にたどり着いた「豊かさ」とは、土から食卓までの道のりが見える食べものを、大切な人といただくことにあるのではないか、と思うようになりました。子どもたちとともに土と近い暮らしをしたいと京都の山間地(京北)へ移住、「耕し歌ふぁーむ」という屋号で小さな小さな農場を家族で運営していいます。「里山のめぐみを畑から食卓へ」をコンセプトに、お米やお野菜を「里山のおすそわけ定期便」という名前で消費者の方々にお届けしています。
 また最近、畑の野菜をおいしく食べるのが大好きなお母ちゃん5人でケータリングユニット「にじいろごはん」を立ち上げました。「食べてくれる人のココロもカラダもキラキラにじいろに、その結果、お山もにじいろに」をコンセプトに、マイ畑を中心にどさっととれる旬のお野菜を、瓶詰、お弁当、おやつ、発酵食、ケータリングなどぼちぼち展開予定です。
 2017年から京都大学大学院農学研究科の博士課程にて、国内外の「オルタナティブ・フード・ネットワーク」を中心に研究をはじめたばかり。「考えて発信して作って食べる小さな農家」を目指しています。

■近藤千嘉さん

 アメリカ、カリフォルニア育ちの日系アメリカ人です。カリフォルニア大学バークレー校において、生物資源学部社会環境学科と人文学部政治学科の学士号を取得しました。大学4年生の時に、アメリカ合衆国農務省によるマイノリティーの農場経営者(黒人、ラテン系、ネイティブアメリカン、女性農業従事者)への長年にわたる差別関係について卒論を執筆しました。卒業後3年間、フードデザート(食の砂漠)地域であるニューオリンズで、マイノリティーの若い農業従事者グループ(14〜22歳)と共にユース農業共同組合を一から立ち上げ、そこで食と農の教育を担当していました。彼ら自身が作る組合を発展させるため、新鮮で安心安全な野菜を栽培して、更に、地域の近隣住民に活動の意義を広める運動を支援してきました。2017年から京都大学大学院農学研究科の修士課程にて、女性の新規就農においての実情を調査し、カリフォルニアと日本との違いを比較して論文を書きたいと思っています。
posted by 使い捨て時代を考える会 at 14:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 事務所
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/184249379
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック